帯に「ノワール小説」と書いてありました。しかし黒というには、赤すぎやしませんか。
読書が情報を摂取するだけの手段に成り下がってしまった。そんなあなたにおすすめしたい。
ただ読んでいるだけで、ページをめくるだけでいつの間にか脳が痺れて手足が震える。
殺し屋専用レストラン「キャンティーン」で働くことになった主人公を襲う数々の暴力、怒号、脅しに「1話で何度吐きそうになってんねん!おエエ!」と突っ込まずにはいられません。ビックリドッキリメカのごとく毎話躍動する個性的な殺人鬼たちと、それを上手くかわしながらも最高級のハンバーガーを振る舞う店主・ボンベロ。
みるも無惨な肉塊を目にした数行先では絶品の調理シーンが繰り広げられ、ペロリと頬張る咀嚼音が脳に響きわたる。気が狂いそうだ、いや、元々気が狂っているのは私のほうかーー。
スパークする倫理観。本能を叩き起こすタンパク質の香り。理性と野生の合挽き肉を、生の執着で挟み込む。裏社会に生きるゴミクズ達の最高の美学をとくと召し上がれ。