ジブリ映画でも話題になった本作ですが、私は読みながら、コペル君に自分を重ね、まるで実家の畳の部屋の縁側で、おじいちゃんに話を聞いてもらっているような、そんな日曜の午後を想像していました。
本書は、堅苦しい人生哲学を押しつけるようなものではありません。日々ふと抱く感情や疑問を、叔父さん(著者)との対話を通して「どう生きるか」という問いに変えていく。そしてその問いを一緒に考えながら、少しずつ大切な言葉にしていく――そんな感覚の一冊でした。
どの章にも頷かされるような示唆がありましたが、特に心に残ったのは「偉大な人間とは何か」について。ナポレオンをかっこいいと思うコペル君に対して、叔父さんが語った次のような言葉が印象的でした。
「ー君も大人になってゆくと、よい心がけをもっていながら、弱いばかりにその心がけを生かし切れないでいる、小さな善人がどんなに多いかということを、おいおいに知って来るだろう。世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄をいた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。」