
ブアイソウな2匹と犬派のボクサーが織りなす、儚く、切ない物語。
祖母は猫と小説があまりに好きでした。飼い猫だけでなく、野良猫まで家に呼び込み、気が付けば庭には猫と手入れされた花々によるある種の楽園が存在していました。そして、本棚には猫が出てくる小説や写真集ばかり。いつも祖母の家に行くたびに、気になった本を持ち帰ることが私の楽しみにもなっていました。親族の中でもかなり遅くに生まれた私にとって、すでに高齢で孫の判別もつかない祖母との唯一の接点は”本”だけだったのかもしれません。そんなある時、目に留まり手に取ったのがこの『猫なんかよんでもこない。』でした。普段、小説や漫画などで一切泣かない私にとって、それは初めての体験をさせてくれるものになりました。1ページに7コマの絵が移す、写実的なその描写にページをめくる手が止まらなかったことを今でも正確に記憶しています。
物語の前半で描かれる主人公(人)は仕事の邪魔をする猫たちをどこか嫌煙しているような雰囲気を見せます。「猫は身勝手で嫌いだ。」と。しかし、ケガでプロボクサーへの道を断たれ、そこには2匹の猫と漫画家の兄貴しか残されていなかった。誰にも頼られない、頼れない主人公を唯一頼ってくれたのは、この2匹にちっぽけな猫たちだけでした。次第に縮まっていく仲と信頼が心動かすものがありました。
疲れた日々の中で読みたい一冊です。ぜひ手に取ってみてください。