
成瀬ファンとして会いに行かねばと早速京都、でなく最寄りの書店へ。「成瀬は天下を取りに行く」シリーズの続編にして完結編。本作の舞台は京都ひいては京都大学。さぞ楽しい出会いが満載だろうとページをひらけば、…第一章からハラハラと涙を流してしまいました。
成瀬あかりを一言で表すならば、んん、これは難しい。
「クラスにひとり、こんな子いたかも…」と言いたくなる意外性はもちろんですが、成瀬は街の誰にも分け隔てなく接する市井の人でもあります。不思議に思えても一人一人と対話する様は鏡のように澄んでいたり、たまには曇ったり。そしてちょっとおかしいけど可愛げのある人々に囲われている。
強いて1つ挙げるのなら、その「行動力」には目を見張るものがありそうですが。振り回すようで振り回されることも好きなのが、成瀬あかりです。
調子が良いようで調子外れな彼女の物語。
それを読むと微笑んではまた、少し泣いてもしまう。
きっと彼女を前にすると、それこそ私たちは「自分を取り戻す」のだと思います。彼女の意外性の中に、自身の慎み隠してしまった意外性を思い出したり、京都や琵琶湖の街景色には、故郷や街を重ねたりする。
そして成瀬と島崎たちの豊かな触れ合いに、私たちは人と関わることの歓びを見つけているのだと思います。
「成瀬あかり」の煌めきを通して、人同士が照らし照らされることの意味を知る全6章。もっと彼女と同じ刻を過ごしたいと、そう願わずにはいられませんでした。是非過去シリーズと合わせて、お手に取っていただきたいです。