
〈森の図書委員今日のおすすめ本〉
『一次元の挿し木』松下龍之介
ずーっと気になっていた本作。
2025年第23回『このミステリーがすごい!』大賞で文庫グランプリ受賞作です。
もう、ほんっっっとうに面白かった!
最近ミステリーを読み始めた人間なのであまり複雑なものだと頭の中が大混乱を起こしてしまうのですが、これは文章が上手すぎてページをめくる手が止まりませんでした。
内容としては、インドでバックされた二百年前の人骨のDNAが、四年前に失踪した妹のものと一致した、というところから始まります。
冒頭からさまざまな謎がちりばめられており、文章が非常に簡潔に書かれています。
本書は七章立てなのですが、その中も細かい節に分かれており、一節一節が非常に短いのです。同じ場面が続くところも節を変えられていたり、全体的にリズミカルな印象でした。
また、ミステリー特有のもったいぶって隠しつづけ読者がイライラするということもないのです。
その場面で私たち読者はどの謎に集中したらいいのか、作者によって気持ちよくコントロールされているのでしょう。すべてが自然に当たり前かのように最高のタイミングで全てが提示されていきます。
さらに驚きなのが、作者の松下龍之介さんは元から小説家になりたかったわけではなく、コロナ禍で留学の目処が立たなくなったことから学費稼ぎのために小説を書き始められたそうです。
またミステリー作家を志望されていたわけではないそうなので今後幅広い作品を私たち読者に届けてくれるのではないでしょうか。
私も今から次作が楽しみです。
いやはや。これがスタート地点とは。
期待しかない作家さんです。