
「必ずしも、音楽そのものに思い入れがあるとは限りません。人生の大事な場面でたまたま流れていた曲が、意外に長く心に残ることもある」
ありえないほどうるさいオルゴール店、題名を見た時、一体どれくらい騒がしいお店なのかと想像しました。しかし本を開き、読み進めるとそこは静かなこじんまりとしたオルゴール店。店主はお客さんの心に流れる音が聞こえるという特殊な耳を持っています。
冒頭に掲載した文が1番印象に残ったセリフです。好きな曲が頭に残るのはもちろんですが、音楽には雰囲気や香りがあると考えています。それは記憶と結びついているからです。旅行に行った際に出会った曲、好きな人にお勧めされた曲、バンドで何度も練習した曲。その曲を聞けば当時の様子や温度を一緒に思い出す事があります。そんな記憶と音楽の関わりはとても素敵で尊いものです。しかしその逆もまた然りで、嫌な記憶と結びついてしまう事もあります。記憶とは実に意地悪で扱いにくいもので、私は最近、自身の記憶力の不便さに嫌気がさしています。けれどこの密接な記憶と感情の関係は私たちの意思ではどうにもならないものなのです。何を覚えていて何を忘れるか、自分でコントロールできたらいいのにと思う時もありますが、海馬はそれを許してくれません。
自分でも気が付かない音の記憶。どれも心が少しだけ暖かくなる不思議な短編集。
あなたの1番はじめに聞いた曲は何ですか?
今すぐに思い出すことはできなくても、小さなきっかけから掬い上げる事ができるかもしれません。