
『 内定先の社長の本は、耄碌した老人の戯言が羅列されたような俗悪な本だった』
『酸素を大量に含んだ血液ですと自慢げに見せてくる先生に、何となく内輪受けのコントを見ているような気分になる』
『広告代理店的な受け売りの欲望の奴隷』
どの一文もパンチラインすぎて、強烈に印象に残る。
整形、心中、激辛、性、酒――登場人物たちは絶望の末にそれらを掴み取るが、それは果たして希望なのか、それとも破滅なのか。物語はあくまでも一人称で進み、快楽や刺激に溺れ、抜け出せなくなっていく人間の心理が、執拗なほど細かく描写されている。
正しく安全な世界に従順になり、自分を失っていく人間と、抵抗の末に倫理から外れた行動を取る人間。そのどちらが「生きている」のか、「正しい」のか、読んでいるとその判断が難しくなっていく。
コロナ禍の鬱屈とした空気が、これでもかというほど詰め込まれた一作だった。
今回初めて金原ひとみさんの作品を手に取ったが、他の作品もぜひ読んでみたいと思わされた。