イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ
森の図書室

イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ

2026.04.02

「もっと広い視野で世界のことを見つめて、世界情勢や社会問題にしっかり向き合って、自分の意見を持って生きていきたいのに。そのうえで誰かを愛したいのに。そういうことが何一つできていないくせに、心の健康が一番大事だとか、生きてるだけで偉いだとか、自分を甘やかすおまじないばかり手に入れ続けている。」

澄香のこの言葉に、胸を刺されました。私はこの作品を、登場人物3人それぞれにとにかく感情移入しながら読みました。
視野を広げて「世界がどうだ」「日本はどうだ」と語ることが重要だと分かっている。それでも、推しのことやアニメのことに没頭している間だけは、社会の問題や現実から目を逸らしていられる。勝手に解釈して短絡的な物語に押し込めて語ることができる快楽がそこにはあるのだと思います。
一方で、推しに大金を注ぎ込むことに対して、「それにどんな意味があるのか」と冷静に問う視点も確かに正しい。物事を俯瞰し、本質的かどうかを考えていれば、大きく間違えることは少なくなるのかもしれません。
でも、では逆に「意味があること」とは何なのか。そう考え始めると、意義があると断言できるものは案外少なくて、結局何も選べず、動けなくなる。そして誰とも連帯できずに、孤独のまま生きることになる。ここには反論のしようがないと思いました。
視野を広げることと、視野を狭めること。どちらが幸せなのか。読み終わった後に残った命題ですが、どちらにも傾きすぎずにその中間にあえて身を置く勇気が大事な気がしています。
余談ですが、2025年のM-1決勝でドンデコルテが言っていた「現実をスワイプ!」というフレーズを聞いたとき、この『イン・ザ・メガチャーチ』を思い出しました!(同じだという方もいらっしゃるんじゃないかしら…?笑)

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