
〈森の図書委員今日のおすすめ本〉
『透明な夜の香り』千早茜
例えば街中で、あるいは駅で、それから学校で、身に憶えのある香りがしました。
その香りは確かに何かを想起させましたが、記憶の引き出しは不完全でいつ、どこで出会ったのか、何の香りだったのかを思い出すことはありませんでした。
嗅覚は私たちが思っている以上の情報を与えてくれます。
知らず知らずに得た嗅覚情報は脳の海馬に直接届いて永達に記憶されるそうです。
人の体臭や、空間の匂いを言語化するのは難しく、再び同じ匂いに触れるまで記憶の底をひっそりと漂います。
確かに覚えているのに、思い出せないという矛盾を抱える。それでも人は香りに執着してしまう。