精神病者を描くにはその人物に限りなく近づく必要があり、謂わば自分の精神を狂人の瀬戸際まで持っていけるかで作品の良し悪しが決まるのではないかなと思っています。もちろん精神に限らず犯罪や殺人、自傷、狂人… 常識から逸脱した分野での作品が多様に存在していますが作者がどこまで近づけているのかで琴線に触れるか振れないかが決まるような気がしています。
三島由紀夫は太宰のことがあったので遠ざけていた作家の1人なのですがただ一言、素晴らしかったです。読後はこれしか言えず絶えず圧倒されました。
精神分析医の主人公が患者麗子の不感症を癒すというシンプルかつ227頁ばかりにも関わらず読み応えのある一冊。久しぶりに純文学に触れたい方、何か読み応えのある本を読みたい方にお薦めしたいです。