空へ/いとうみく

去年の夏、とうちゃんが倒れた。
くも膜下出血だった。
オレたちになんの断りもなく死んじゃうなんて、ルール違反だ。
―投げ出さないことだよ、苦しい時ほどさ―
神輿コブを見せて得意そうに笑う父ちゃんが脳裏をよぎる。
オレ、担ぐんだ。神輿、担ぐんだよ。
会ってもう一度話がしたい。

素直になれない、大人になりきれない、もどかしい中学1年生の主人公の心情を奏でる文章がとにかく美しくて、透き通っていて、心の中にスっと入って来ます。
夏の終わり、ツクツクボウシが鳴く頃に、遠くへ旅立ってしまった大切な人に思いを馳せて1人ひっそりと読みたい、そんな本です。