瀬戸内海の島に住む暁海とそこに引っ越してきた櫂。彼らの共通点は自分の人生を他人に侵されているところ。それが2人の恋に枷となって付き纏ってきます。
深い共通点を持つ2人は恋愛関係に発展していくのですが、これがもうままならないのです。
愛を自覚すればするほど孤独感が増していく暁海と櫂。そして2人の艱難辛苦に満ちた環境に心がぺっしゃんこになります。
ただでさえ、傷をたくさん負っているのに島民は2人の関係に後ろ指をさします。
確かに彼らの関係は特殊だし清いとは言えません。
だけど、そもそも恋愛の正しさっていつ誰が決めたのですか?
人に自慢できるお付き合いをして、私達お手手繋いで社会慣習に則った幸せを享受してますって胸を張って言わなければいけませんか?
現代社会って何処か愛がステータスになっているように思うんです。
大衆向けの愛こそが幸福です、みたいな。
分かります。分かるんですが、その愛ってなんだか工場で量産されたみたいに同じカタチをしているような気がしてしまいます。
恋愛はインスタントではありません……! と私は信じています。
たとえ、天変地異に見舞われようとも四面楚歌になろうとも、たった一人に愛を向け続ける痛みと美しさに撃ち抜かれる一作でした。