形に残るものの中で1番の大きな買い物は絵です。
アートフェアなどをうろうろと絵を見に行ったりするのですが、芸術とか正直よく分かりません。
「これはいい!」という自分由来の直感と感性をいつも頼りにしています。
今回の御本はそんな芸術の世界で織り成される青春と恋愛の物語です。
とあるアトリエに通っている少年少女。様々な理由と想いで絵に向き合っている生徒達の中に2人の天才がいます。
お互い絵に対して少し違う姿勢と技術を持ち、その自分とは異なった技術を持つ遥都に絵以外にはまったく興味関心がなかった灯子は心を開いていきます。
競い合って、高め合って、そうやって絵を描き続けていく未来しか思い付かない。そんなことを信じて疑わなかったのに。
ある日、嵐による土砂崩れがアトリエを襲って……。
綾崎先生の書く作品はすべてが丁寧なのです。
アートと恋愛をテーマにしても、そのどちらも疎かにされず細やかに美しい描写をします。そしてリアルさも忘れません。
中心は遥都と灯子の関係がどうなっていくのか……というところですが、他の登場人物の心情について取りこぼしが一切ないのです。
天才を目の当たりにして挫折してしまった人。
凡庸であることを受け入れて地続きでも積み上げていくしかなかった人。
もう読んでいるだけで、ぐーっとなります。
最後は「言葉がいらない愛ってこういうことなんだな」と2人を見て確信しました。
私は病院で遥都が灯子を見つめるシーンがとても好きです。
読了後にもしかして……と想像出来るからです。
単行本も文庫本も表紙が綺麗なので見てみてください!
ちなみに私が買った絵は少しお値引きしていただいて12万円でした。