『かんむり』 彩瀬まる
人間関係ってまさに型抜きみたいだわ。
と、割れてしまった残骸を尻目に300円をお兄さんに渡しながら当時小学生だった私は思いました。
友人と行ったお祭りでカリカリと余白を削っていく。慎重に優しく触れているのにいとも容易く崩れてしまうそれ。
最初に見るのは外壁で。それを少しずつ崩していってやっと本来の有り様に辿り着く。
まさにこのプロセスが対人関係そのものです。
けれど、取り出した部分も一歩間違えれば呆気なく粉々になってしまうという……。
結局のところ本当の自分なんて見せるべきではないのかもしれません。
誰かの本当なんて見るべきではないのでしょうか。
なんだか思っていたのと違うとか。
変わっちゃったねとか。
前者はただの押し付けで、後者はただ見えなかっただけ。
10代からお付き合いして、結婚。そこまでいったら、そりゃあ辟易したり相手に疲れたりするものです。
けれど、折り合いをつけていかねばならぬもの。だってもう結婚までしているんですよ。
そんな緩やかな夫婦の生涯が書かれていますがなんとも言えないざらりとした違和感がずっとこちらを見ているような……。
結婚生活のこんなはずじゃなかったという閉塞感と夫婦生活を終えてここまできてしまったという開放感。
温かい物語というよりも生温い感じです。
私はまだ結婚経験がないのでリアルリティの有無は分かりません。
想像でもこんな窒息しそうな夫婦関係嫌だーと頭を抱えてしまいそうなりました。
でも、そんな関係でも見送ったらそれはそれで哀しいものなのだろうな、とも感じます。
結婚は人生の墓場なんて言いますが、一緒,に掘った穴なのだから埋まってもいいという方と出来れば生涯を共にしたいです。