憐憫/島本理生
森の図書室

憐憫/島本理生

2022.12.11

『そしていつか、私は彼を手放せなくなっていたーー。』
好きな気配を察知。

『私が夜の街で偶然出会った男・柏木と過ごした混沌の日々。』
混沌?! それは大好きなやつ!

加えてタイトルの艶めかしさに惹かれ、出勤前に衝動買い。

約170ページという手軽な長さながらも密度がギッチギッチです。
不鮮明で不確定な大人の恋愛と言いますか……。その手前にありながらも、お互いの誠実な名前が付いた関係の人達よりも昏い部分で繋がっていると言いますか……。
この人なら私が誰にも見せられずに押し殺した形を語るまでもなく、輪郭をなぞってくれているという確信を紗良が柏木に向けています。

心模様が繊細に鮮明に描かれているのに、すべてに触れきれていない感が残ります。
分かるような、分からないような、もやもやもんもんが最後まで抜けません。
その難解さこそ、ヒトの心の複雑を表しているのでしょうか。

ここまで意味のある2人なのに、境目の分からない曖昧な関係であることがまた驚きです。
時折現れる踏み越えてはいけないラインの気配が「あ、そういえばそこまで深い繋がりじゃなかった」ってハッとさせられます。
あくまでお互いを慰めているだけ。

疵を癒すというよりも、忘れるための寄り添い合い。
正しさを選べば終わる。深めようと思えば消える。そんな白昼夢のようなお付き合い。

これが、いわゆる大人の関係か!

むつかしい……。
恋愛の奥行きはまだまだ続くのですね。

曖昧模糊を通り越してあいあいまいまいもこもことしていて、私には掴みきれませんでした。
しかし、なんだか柔らかい部分に小さな棘が刺さったままのような気分です。

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