「俄然、僕の肉体は街の喧騒を避けて進んでいるようだったが、時々、僕は僕の肉体に追いついたりもしたので、あるいは全ての行動が自分の意志によるものだったのかもしれない。だが、僕が僕の肉体を追い越すことは一度もなかった」
冒頭にある「歩く」描写。グッと胸掴まれたのを覚えています。
又吉さんの書く、登場人物のどうしようもない不器用さ。心の中を渦巻く泥臭い感情。でも彼の中にある正義。彼等をどこまでも身近に感じて没入していく感覚になります。
ところでみなさん、「渦」という又吉さんのYouTubeチャンネルはご存知でしょうか。私の大好きなチャンネルで、又吉さんが文章を妄想解釈したり、山手線に新たな駅名をつけたり…色々な企画があります。私のお気に入りは「百の三」という企画で、「新社会人に伝えたいこと」「繊細さんの気になることリスト」などを又吉さんが100個出して、その中から珠玉の3つを選びます。又吉さんの幼少期や大切にしていることに触れるうちに、だからこそこの描写が生まれたのかと本と繋がる部分もあります。また、ただ笑える場面も沢山あります。又吉さんの作品を読まれたことのある方は是非YouTubeの方もご覧になってみてください。