高校時代ベースに熱中しながらも吹奏楽部でコントラバスを演奏していた主人公。楽器から離れバーを経営する彼に突如持ち込まれた25年ぶりの部活の再結成話と同期の死をきっかけに過去を回想する物語。
高校時代の部活動の再結成、それは無邪気で、無責任で、輝いていた時代に戻れるような気がして、なんだかワクワクしますよね。
大人になった主人公のどうしようもない現実と高校生の頃の青春が対比され、切なくも懐かしい気持ちになれるお話です。
異性を異性として意識しだした頃の妙な気恥しさとか、好奇心とか、意地の張り合いとか、そういうものがリアルに描写され共感できる反面、2010年代に高校生を過ごした私にとっては「そんなこと許されるの!?」と1980年代の若者の自由さに驚かされたりもしました。
「合奏には魔力がある。…ひょっとすると友情よりも素晴らしく、ひょっとすると恋愛よりも過酷」
主人公によってそう評される”合奏”が吹奏楽部員を繋いでいきます。ノンストップで切り替わる現在と過去の回想の中で、変わってしまったものと、ほんの少しだけの変わらなかったものを感じながら読み進めて欲しいです。