ある男/平野啓一郎

「愛したはずの夫はまったくの別人だった。」
このキャッチコピーに惹かれ手に取りました。
死後に夫・大祐が別人だったことが判明し、その妻から依頼を受けた弁護士の城戸が、果たして大祐は何者だったのかに迫っていくというストーリー。
“本物の大祐”は生きている？なぜ入れ替わった？様々な人々の過去を紐解きながら謎が徐々に解き明かされていきます。

「もし全てを捨てて違う人生を生きられたら」
この願いがかなった時人は本当に違う人物として、違う人生を生きることができるのでしょうか。全てを捨て、過去を偽って手に入れた人生で得る感情は本物といえるのか。変えられない過去を無くしたいと願うことは罪なのか。そして違う人生を生きれば、人はその人自身を愛することができるのか。読み進めていくうちにこんな問いが次々と浮かんできて、城戸と一緒に考え込んでしまいました。

人間にとっての「自分」とは、「愛」とは何なのかを1人の”ある男”の人生を辿りながら考えてみてください。