ぼくは愛を証明しようと思う/藤沢数希
森の図書室

ぼくは愛を証明しようと思う/藤沢数希

2024.04.21

読み方が2つある。
“僕”を主人公とした恋愛攻略物語か、
“読者”を主人公とした自己啓発本か。

“僕”を主人公とした場合、「こんな行動無理だ」とか、「そんなに上手くいかない」とか、「私(読者)のキャラと合わないから…」といった感情になる。確かに世に溢れる主人公かヒロインが死ぬといった恋愛小説や青春小説とはかけ離れている。だからこそ、読み終わった後の感情に哀しさや切なさは一切ない。ただ、得も言えない虚しさを感じる。これは私が主人公である“僕”には絶対なれないからかもしれないが、どこか虚しい。

対して、“読者”を主人公にする自己啓発本であれば、これは恋愛だけでなく営業や赤の他人とのコミュニケーションの参考として必読な内容である。恋愛も営業も相手の心に入り込むといった目的は同じである。一つの事例集として、人に懐柔する方法集として多くの人に参考になるかもしれない。ただ、タイトルにある「証明」というより、パターン化の方が内容には合致するように思え、また本文にある「女と恋愛するのに、愛など必要ないのだ。(p.241)」と言った言葉には疑問を抱く。

総じて、個人的な意見であるが、前者のように読めばやるせない恋愛小説であり、後者のように読めば必読の参考書である。もちろん人によって捉え方は様々であり、別にやるせない恋愛小説も好みである。

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