突然自分の身体を他人に憑依されてしまった里美。しかも憑依してきたのは憧れの先輩で、既に毒殺されて死んでしまっていることも発覚して…不思議な”イタコ体質”を描く『マリオネット症候群』
借り物のクラリネットを壊してしまったことで「ドレミファソラシド」だけ聞こえなくなってしまった翔太。しかも同居人が拉致されたり、謎の暗号をとかなければならなくなったり…次々謎の事件に巻き込まれていく『クラリネット症候群』
これら中編二作で構成された一冊です。
前半のマリオネット症候群は物語としてはどこかコミカルに描かれますが、その内容とのミスマッチさが面白いところです。ちょっとした失敗だけでなく、殺人までも「あ、やっちゃった。」みたいなテンションで描かれるので最初見逃してしまいましたが、あとからかなり狂った人達では?と気がついて薄ら寒くなりました。1番最後の描写が最も狂気が感じられます、お楽しみに。
後半のクラリネット症候群でも怪奇現象、謎解き、恋愛、家族愛など盛りだくさんで普通なら中編の中に要素を詰めすぎに感じられそうなものですが、独特の少し他人事のような語り口によってそれらの要素がすっと通り抜けていきます。「結構重大な事実だよね!?」と思うことまでさらっととばされていくのが逆に愉快でした。
急速に進む物語の中で意表をつかれまくる展開に、置いていかれず食らいついてくださいね!