「お金が欲しい」そう思うこと自体は至極当然のことだと思いますが、本作はお金に取り憑かれ罪を重ねていく少女の物語。本屋大賞2024にもノミネートされた今話題の一冊です。
この本を読んでいる人で、いわゆる”その日暮らし”の生活を実体を伴って想像できる人ってどのくらいいるんでしょうか。偏見かもしれませんが、読書というのはある程度余裕のある生活の中での趣味のような気がするので、あまりいないのではないでしょうか。
かくいう私もそのような人々の存在は理解していても実感はなくて、本作で緻密に描かれた描写に衝撃を受けざるをえませんでした。誰も頼れない、理解してくれない、信じられるのはお金と自分だけ、とにかくお金を稼がないと……そんな思考に陥って徐々に狂っていく主人公の心理が違和感なく突き刺さってきて、圧倒されました。