「あなたはもともとそういう人間ですか?」
「ついさっきまで思ってもいなかったことを手に取って、それを振りかざしているだけではないですか?」
「浩介の使う編集者用語。戦争について特集している雑誌。好き勝手に学生たちを選別していく人事部の人たち。終戦記念特別ドラマで涙を流す俳優。もともとそうではないのに、もともとそうだったというような顔をしているあらゆるもの、人。」
いつからか話し合いが苦手になったような気がします。授業で教授が発した言葉、本で読んだ一節、新聞の見出し語、何を話しても誰かの言葉を借用しているような気がして、それが相手に見透かされているような気がして。
就活においては、「この問題の解決に携われると思って~」、「この経験が御社の業務で活かせると考えて~」とあたかもブレない一本の道を歩んできたかのように見せるのに、実際はそんなことなくてとんだ付け焼き刃に過ぎなかったりします。そういうもんだ!と割り切れない性格には少し辛い作業です。
環境問題、教育課題、国内格差、地方創生、エネルギー問題、物流問題、途上国の開発経済、安全保障…全部に関心があって、どれもうっすらと自分ごとで、でも遠い世界でもあって、自分が語って良いことなのかと迷うこともあります。だけど、その中にも”本気の一秒”があれば良い、本気で貢献したいと自分が思った1秒があれば、それに誠実であれば良いのだと、朝井さんに背中を押してもらえた気がします。
『何者』のアナザーストーリー六篇を収録。ぜひ『何者』の余韻に浸りながらこちらの本も併せて読んでいただきたいです。