青山美智子さん作品の特徴といえば、短編集ながらも各話の人物たちが少しずつ関わり、不思議な化学反応を起こしていく様子です。
一つ一つの物語を読んだ時の楽しさはもちろん、全てを読み終えた時の読後感は、小さく温かい街で、ゆっくりと時間を過ごしたような安心感があります。
「5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。
近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。
人呼んで”リカバリー・カバヒコ”ーー。」
失敗した時、苦しい時、心が痛む時。
その理由や原因を直視することは、難しいことだと思います。
なぜなら、私たち人間は、見たいものを見たいようにしか見ることができないからです。彼のローマ皇帝・カエサルもそんな言葉を残していたように、きっとそれは何千年も前から人間に宿った、変わることのない性質なのかもしれません。
しかしながら、心の傷をケアしたりトラウマを克服したりするためには、その苦しみのきっかけに真っ直ぐに目を向け、受け入れることが必要です。
この「リカバリーカバヒコ」は、カバヒコを通して、人々が自身の負った傷や苦しみにゆっくりと向き合いながら、自分で自分をケアすることを覚えていく、そんな物語です。
自分の弱さに向き合いたいけど、もしそれを難しく感じたら。
きっとこの本は、あなたに大きな勇気を授ける、素敵な隣人となってくれることでしょう。