私は今、大学生をしている。
地に足つかず社会を滞空するモラトリアムの時間は、大人から見れば懐かしく輝かしい時間なのかもしれないが、当事者の私にとっては苦しいこともある。
何者でもなく何者にもなれない。
その事実に対して、自分の足跡を残そうと足掻く者、大それたことに挑戦する者、何者でもないと諦めて徒らに時間を過ごす者、批判することで自己を保とうとする者、、、色んな過ごし方がある。本作品にはそんな等身大の大学生の日々と感情がそのままに描かれている。
主人公は初めて出会う種類の人間に感化され何者かになろうと奮闘するも、加減を知らず大切な仲間に対し行き過ぎた期待を抱いてしまった。結果、過去の思い出と今の自分を正当化し変わっていく彼らを悪役に仕立て上げ攻撃してしまう。若さゆえの過ちだ。しかし衝突することで初めて知る痛みもある。最後には、きっとこの時期の葛藤や失敗は自分をぐんと成長させてくれるものだと信じることができた。
人は、学生が終わり社会に出て初めて当時の自分が「青くて痛くて脆い」人間だったことに気付くのだろう。今の自分は登場人物の心情に共感する部分が多かったが、大人になって再びページを開いた時何を感じるのか楽しみだ。