Iの悲劇/米澤穂信
森の図書室

Iの悲劇/米澤穂信

2024.11.20

「氷菓シリーズ」など馴染みある日常の謎を扱う米澤穂信さんの中でも、渋くビターな一作です。
本作のような挑戦と遊び、そして現代社会を蔑ろにしない態度に作家としての誠実さを感じます。

「一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。」
限界集落に再び移住計画を進める市役所職員が主人公。彼と移住者のやりとりの連作短編です。

なんとパッとしない現実的な設定でしょうか。いやしかし、だからこそ面白い。
この状況から「そう展開するのか!?」を幾度も繰り返しながら、現実の地域格差や過疎問題にも繋げる見事な構成力。
他の米澤作品としては「黒牢城」「王とサーカス」にも共通した読み心地があります。

さびれた市役所、やる気のない上司、自治体と住民の無味無臭なやりとり。
そんな淡々とした文章に潜んだ伏線、そして「Iの悲劇」というタイトルの哀愁に気づいた時、この作品の印象がガラリと変わることでしょう。

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