一番好きな米澤穂信作品です。
物事を「理解」することの先には「納得」することがあると私は思います。
この2つの差は、そこに感情が乗っているかどうか。
よく「理解」することばかりが大切だと謳われますが、そこに感情を乗せることができるかどうかというのは、あまり取り上げられません。
それこそ多少の教育や知識を経ていれば、大体のことは「理解」できるようになります。
しかし「納得」が難しいのです。貧困も差別も格差も暴力も「理解」はしているけど無くならない。
それは「理解」だけでなく「納得」がそこにないから。分断の先にいる赤の他人のために、人は感情的になれないからです。
王とサーカスは、そんな「理解」の先にある「納得」までを捉えた物語です。
この作品にミステリというラベルを貼るのは、時代がもう少し後になってからにしたいな、とそんな風に思ってしまいます。