キングオブコント2021。空気階段が優勝したその日、表紙買いしたこの小説をちょうど読み切ったのを覚えています。その日、妙に感動したんですよね。
「世の中にはコントしかり小説しかり、こんなにも面白いものが溢れているのか」と。
今でこそ読書量が増えた私ですが、3年前は全くそうではありませんでした。
もしかするとこの「52ヘルツのクジラたち」との出会いこそ、読書生活のスタートとなる兆候だったのかもしれません。
読書での成功体験を得るには、最高の一冊と言えます。
この本を一言でいうなら「実直」が一番でしょう。
地方格差、虐待、性的マイノリティ、差別といった社会の抱える課題を、真正面から受け止めにいく内容。
中途半端には描かないという覚悟の先の、一種の終着点的な作品です。
「魂の番」。文字以上の意味を持つこの言葉が生まれるため、脈絡としての哲学、つまりはこの物語は必要だったのかなと。そんな風に今でも感じています。