羊と鋼の森/宮下奈都
森の図書室

羊と鋼の森/宮下奈都

2025.01.19

ピアノの調律師。
専門職の中でも、特に脚光を浴びることが少ない職業に焦点を当てた、ある一人の青年の成長を描いた物語です。
なかなかピアノを弾く人の数に対して、調律をしたことがある人は少ないように思います。

「調律の仕事は、ひとりでは完成しない」ものです。
ピアノ自体の特性や置かれた環境、そしてその弾き手との相性があります。
カウンセラーや医者のように、状態をヒアリングし、様子を確かめて適切な処方を選ぶ。
つまりは、調律という仕事は人と人、人と物との交流が織りなす臨床的な側面があるのだなと気づきました。

黙々と数時間作業をし続ける閉じこもった職でありつつも、
思索に没頭して自らの哲学を打ち立てていく主人公。そして先輩たちから受け取る言葉の数々。

才能のない人間だったとして、如何にしてさらなる一歩を踏み出すべきなのか。

本屋大賞となりベストセラーとなった本作が、そんな問いに至極真っ当な答えを示してくれたことに、
なんだか嬉しさを感じてしまいました。

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