「はじめまして。ヒトは二回目ですが、オス個体は初めてです。」
大好きな朝井リョウさんの新作。
さあ今回はどんな衝撃を与えてくれるんだろう。
読み始めて数行で朝井さんの海に落とされて溺れて上がってこられない。
前作の「正欲」を超えて、つまりは「マイノリティ」や「多様性」をこえて、「人間」「社会」そして「世界全体」の正しいとされている像をこれでもかと辛辣に崩していきます。あまりにも自分を刺されすぎて、「やっぱり朝井さんすごい」と「これからどうやって生きていこう」を行き来しながら読みました。
「人間の可能性を拡大する仕事。
より発展的な未来を目指して。
世界が、ここで働くあなたの成長を待ち望んでいます。」
就職活動をしていると、この言葉を毎日のように浴び続けます。
何の違和感もなかったこういう言葉たち。しかし読後には、「『今以上よくなる』レースから降りられなくて可哀そうだね」ってささやく〇〇の言葉が耳から離れなくなります。
「これまで色んな種を担当してきましたけど、今ここ、を飛び越えた不確かなことばかり考え込んで精神を病んじゃうって、そんなのヒトくらいでしたよ、少なくとも私の経験では。」