「昨日、私は拳銃を拾った。あるいは、盗んだのかもしれないが、私にはよくわからない。」
1~2時間程度で読了できる、純文学に抵抗がある方にもおすすめの一冊。
主人公・西川はごく平凡な大学生として日々を送りますが、銃を隠し歩くことで湧き起こる、高揚感や性格の変化が隅々まで描かれます。そこには「人の気分や気まぐれってこんな風に言葉にできるんだ」という感動がありました。心の内や行動感覚の繊細な描写にある、純文学の持つ凄まじいエネルギー。
読んだ後しばらく、脳内で中村文則が実況中継してるような感覚に陥りましたし、誰しもに潜んだ暴力性を自分のうちにも確かに感じる、良い読書体験でした。
自分は純文学とエンタメ小説の違いとして「どこが大事な文章か、何を伝えたいかわかりやすくなっているものがエンタメ小説、その反対が純文学」という基準を採用しているのですが、この小説は「純文学とされているけどかなりエンタメ小説にも寄っているな」と思えました。だって読者としては彼が引き金をひいてしまう瞬間を、いまかいまかと期待して読むわけですから。
もちろん実際引き金を引くのかは、ご自分の目で確かめて欲しいです。というか、終わり方めっちゃ好き。誰にでも読んでほしいですね。