男性に読んでほしい。
そう思ったのは、自分が男性であったからでもあるし、他人の生きがいに目を向けなければならないと思ったから。
寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。
仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター・佐久間真奈が主人公。彼女の働く「芥子実庵」での出来事を中心とした、五編からの連絡短編集です。
私は26歳ですが、去年祖父が二人とも亡くなり、死ぬこと、ひいては生きることについて身の回りの出来事を通して顧みることが多くなったなと思います。それは別に重苦しいことではなく、誰にでも訪れるそういうタイミングなのかなと思います。
ただこの作品を通して、人の死を見つめることとは、どういうことなんだろうと再び自分に問いたくなりました。
人が死ぬことの裏側には、生きていたという途方もない事実が横たわっていて、果たされようとしていた生きがいとその残り香は、その人が死んでも私たちの周りを漂います。
生きがいを果たすこと。それは、運命や常識によって課されたロールプレイと十字路でぶつかりあい、時には葛藤として、時には圧倒的な加害として人を内外から傷つけます。人は孤独を前提として、背水のもとそれと戦わなければならない。
生きていようが死んでいようが人を大切に想うこと。それだけが最後まで残り続ける抵抗の手段のように思いました