池袋ウエストゲートパークや娼年など数々の作品を生み出されている石田衣良さんの著書。
映像作品はよく拝見していましたが、文で読むのは初めてかもしれません。
主人公の雅人は、仕事も家庭も愛人も友人も全て順調だった。
会社では信頼のおける部下に囲まれ、都内一等地にある家に帰れば美人の妻が笑顔で出迎える。4年もの間不倫関係を続けている聞き分けの良い愛人、共同出資をしてバーを経営している昔からの悪友。
流されながら生きてきた四十代半ば、二十歳も若い少女のような女に出会い底知れぬ恋に陥ってしまう。
巻末にある解説の中で安西水丸さんが「現代版の『人間失格』かもしれない」と書かれておら、まさに!と思いました。
妻と愛人と己。どっしりと安定した正三角形。つい先日まで自分がその揺るぎない頂点にいると思っていた。
きっと、このような複雑恋愛(不倫を肯定するような表現なので好きではないですがここはあえてこう記す)をされている人は誰もが自分が頂点にいると錯覚するのでしょう。
己の罪には何も感じず、他人の罪には嫉妬する。
第三者から見ると滑稽すぎて口角すら上がりませんが、当事者たちは眉さえもつり上げずにはいられないのでしょうね。
『男がひとり、どんな形で破滅しようが、女とは違ってこの世界には傷ひとつ残すことはできない』
男と女。これはいつの時代も滑稽なものですね。