途方もなく優しい二人が、優しさを誤り続けた末の悲喜劇。
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。
悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきて—。
声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまった。
こんなあらすじで始まる本書。男子校特有のトークとノリが一番の醍醐味でしょう。まさに「男子高校生の日常」のような、驚くほどの読みやすさとポップさで物語は展開していきます。本書の評価は、ここを「ミソ」とするか「フリ」と捉えるかで変わってくるように思います。
遠くに見える暗雲のように山田の死に潜んだ謎。ポップの裏に蠢くミステリが繋がった時、物語は転換を迎えます。
最後に魅せる純文学的な領域への昇華。音読してしまいたいラスト数ページは、もはや映画、音楽とも言えるでしょう。
一つの小説としてよりも一つの体験として、手放しで絶賛したい作品です。