隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい/白尾悠
森の図書室

隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい/白尾悠

2025.05.28

タイトルと表紙の爽やかさに惹かれて手に取りました。

本作は心地よい暮らしを作るために多世代の住人が協働するコミュニティ型マンション”ココ・アパートメント”に住む人たちのお話が全6章紡がれています。

これは、本当にいい作品であるでした。
特に印象深いのは、第6章の菅野康子さんという女性のエピソード。

彼女は東北の小さな村の出身でこのアパートメントでもとっても愛されている人。このアパートメントの大家である勲男さんと故郷も近く、彼は康子さんが話す村での出来事を聞くのが好きだった。
その日も、いつものように村の話をしていると康子さんが今まで胸に秘めていた思いを話始める。

他の章のお話ももちろん素敵なのですが、同じ女性として考えさせられるお話でした。

今と時代背景が違うとはいえ、やはり女性の社会進出は今なお大きな問題だと感じます。

女性は結婚して、子供を産んで、家族を守ることこそが幸せ。男に仕事で勝ることなんてない。

昔ほどこの考えが強く残っているとは思いませんが、ゼロではないと感じます。
実際私自身も、先日十数年ぶりに会った親戚に「結婚はまだなのか?」、「子供は考えていないのか?」「同性愛者なのか?」、「このまま1人で生きていくのは寂しいぞ」、「誰があなたの老後を見てくれるの?」など、これでもかというほどの言葉を浴びせられました。

そんなとき、何も聞かずただ温かいハーブティーを一緒に飲んでくれる隣人がいたらどんなに救われるか。

同情してほしいわけじゃない。
一緒に悪口を言ってほしいわけじゃない。

ただ、そっと寄り添って見守ってくれるだけでいい。

ときどきコハン(このアパートメントではご飯をそう呼ぶのです)を一緒にしたり、共有スペースでつまみを持ち寄ってお酒を飲んだり、季節のイベントを全員で楽しんだり。

そういった交流のなかでうまれる心の変化や新たな歩みを大事にしたい。

隣にどんな人が住んでいるのかわからないこの時代にこそ、必要なものだと思いました。

あったら絶対住みたいな。

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