〈森の図書委員今日のおすすめ本〉
『小説』野崎まど
「小説は読むだけじゃ、駄目なのか」
コンテンツの消費速度が常軌を逸する昨今。
江戸時代の人が1年で接種する情報量のを現代人はたったの1日で接種しているという話を聞いたことがあります。
「ただ消費するだけ」は幸せなのか。何かを損なっていないか。
そんな問いを、小説を「読むこと」と「書くこと」をテーマに、独自の理論・幻想を込めて描かれた本作。
宇宙、生命、権利、言葉、意味—。
次々に深化していく問いを繋ぎ合わせ、圧倒的な強度と立体感で、この問いに答えます。
私自身、小説を読むだけでなく音楽なども含めクリエイティブに向き合うことが多いのですが、
その中で澱むように溜まっていた悩みが、一気に開ける感覚がありました。
ただ読むことだけでなく、それを作ることも宇宙規模で肯定するこの試みには、
壮大すぎて笑ってしまう部分もありますが、もの凄く「分かる」と思ってしまいました。
野崎まどさん、素敵な小説をありがとうございました。