「自分という人間は、社会から、しっかり線を引かれるべきだと思っているので。ほっといてほしいんです。ほっといてもらえれば、勝手に生きるので。」
朝井さんは鋭利で瞬発力のある言葉使いがとっても上手なので少しでも共感する言葉があれば一瞬で彼の世界に飲み込まれてしまいます。個人的にその特徴がよく現れているのが短編だと感じていますが、それに対し長編は登場人物の複雑な位置関係が最後に集結し収縮していくものが多いような気がします。どちらも朝井さんらしい言葉の数々に魅了されるばかりですが今回の『正欲』は後者の長編。朝井さんの構成力に張り倒されたい人にオススメしたいです。(ちなみに短編のおすすめは『どうしても生きてる』です。)