死にたがりの君に贈る物語/綾崎隼
森の図書室

死にたがりの君に贈る物語/綾崎隼

2022.11.09

始まりのすべてにきっかけがあるように、私の本好きにもきっかけがあります。
今回おすすめする御本はそのきっかけになった作家さんのものです。

人生に大きく影響を与えてくれた一冊。
生きがいとも言えるような物語がある日突然失われてしまったら……。
小説家・ミマサカリオリの訃報によって純恋の愛するシリーズ小説が未完で終わりを告げる。
結末が読めないなら、と純恋は自殺未遂を起こしてしまう。
そして始まるストーリーの再現。あり得るはずのない事件。

ただ書きたいという望みだけだったのに。自分だけのものだったはずなのに。
この物語だけが指針になる。この作家が書き続けてくれるから生きていける。
書く側と読む側の痛いまでの想いと、どうしようもない感情。
大衆の目に触れやすく、大衆が目に触れやすい現代のネットワーク社会で自分を発信することは恐怖です。
容易に傷付けられてしまう世の中で、もしも大好きな作家が心折れてしまったらと思うと不安です。

しかして、私が純恋と同じ状況になった時多大なショックを受けることは想像出来るのですが、強い思いで「書いてよ! 私が待ってるんだ!」とは伝えられない気がします。
それでもどんな場面においても自分の感情を言葉に出来る方が強いことは明白です。
99人の賞賛の中に埋もれるとしても、たった1人の批判に掻き消されるとしても、好きであることは形にしていくべきだと痛感しました。

綾崎先生の文は柔らかくて優しいのに、胸の奥にズサッと刺さって残ります。
世界にこんな綺麗な言葉があるんだ! と教えてくれた方の御本なので、ぜひ皆様に読んでいただきたいです。

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