「さっきまでおしつぶされて、くしゃくしゃの紙くずみたいに変形していた人びとは、ホームに降り立つと途端に正しい大きさにふくらんで、元の形のちゃんとした男や女になって足早に歩いていく」
大好きな江國香織さんの短編集です。どの話も好きですが、私は『ねぎを刻む』のこの言葉が印象的でした。
田舎から4月に上京して来た私には、電車の中が息が詰まるように感じてしまいます。夜遅くに最寄り駅に降り立った瞬間には、電車から解放された身体の軽さと、漸く家に帰れるという安心感を覚えます。改札に向かって歩く人々を見ながら皆さま今日も一日頑張りましたね、と謎の仲間意識を感じてしまうのは私だけでしょうか。