「風の中で昔日の出来事が風鈴に揺れては乾いた音を響かせた。氷と水がグラスの中でぶつかり合うように冷ややかな音色だった」
約束は未来、思い出は過去。未来と過去が心の多くを占める彼の今を追うのは辛かったです。
江國香織さんと辻仁成さんという2人の作者が、再会を約するかつての恋人それぞれの視点を綴るという珍しい形の小説となっています。
どちらから読まれても十分楽しめますが、私は江國香織の作品から読むことをおすすめします。
続きがとにかく気になってページを捲る手が止まりませんでした。
丁寧な情景描写や心理描写が詰まっていて、折に触れて読み返したくなる美しい日本語が感じられる本です。