「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
中2の夏休み、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した ーー。
奇想天外、されど一所懸命。
信じた道に真っ直ぐな主人公・成瀬あかりと、彼女を取り巻く人々が織りなす、飄々としながらもスパイスに満ちた青春アンソロジー。
1ヶ月後に閉店を控える西武滋賀大津店に通い、ローカルテレビの中継に毎日映り込もうと画策する『ありがとう西武大津店』や幼馴染・島崎を巻き込んでM-1グランプリにエントリーし、漫才の道を突き進む(?)『膳所からきました』など、計六篇を収録。
変だけど、変じゃないかも。
そんな風に思わせてくれる成瀬の成長と、彼女に振り回されながらも変化していく人々の姿。ありふれた温度感なのに、爽快さに溢れていて一気読み必至です。
2024年の本屋大賞作品でもあり、図書館では未だに予約待ちが解消されないなんて話も。
近年に同賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち/町田そのこ」「汝、星のごとく/凪良ゆう」といった社会問題に切りこむ重心の低い作品とはうって代わり、淡々とした明るさに溢れる老若男女問わずおすすめしたい作品です。