消滅世界/村田沙耶香
森の図書室

消滅世界/村田沙耶香

2025.01.26

「その世界に一番適した狂い方で、発狂するのがいちばん楽なのに」

村田さんの作品はこれで5作目だが、やはり通底しているテーマは似ていると感じた。
「常識」は変わりゆく。時代が違えば今の常識は十分非常識である、と。

本作で描かれていたのは恋愛・性・家族システムの在り方であった。
ふいに考えることがあるが、おじいちゃんおばあちゃんの時代はお見合い結婚が普通だった。父母の時代からロマンティック・ラブ、つまりは恋愛結婚が主流になった。たった何十年かでこれだけ結婚のあり方が変わってきているんだから、今の常識が私が死ぬ頃には全く受け入れられなくなっているのかもしれない。

この本の世界は、セックスではなく人工授精で子供を産むことが定着している。性交は”原始的な方法”と言われており、夫婦間の性交の末に子を生んだ母親を汚らわしく思う娘の目線で物語は幕を開ける。

最初は、いやそんなことある?と思う場面が度々あったが、読み進めるうちに、この世界がすぐそこにあるような気がして、何が、誰が正しいのかわからなくなって、身体がふるえた。

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