最近、無意識に優しい世界を求めているのかこの素敵な表紙に惹かれ読み始めました。
はじめまして、寺地はるなさんの世界。
そこは読み終わる頃には深く呼吸ができるようになれる素敵な世界でした。
こんなに【優しさ】を繊細なキラキラ光る飴細工のように表現される作家さんでいらしたんですね。
今まで読まなかったことが悔やまれます。
主人公は会社員の實成(みなり)。
4兄姉の末っ子で、滋賀にある実家を離れ大阪で一人暮らしをしている。
彼は父親を無くした後から得体の知れない不安に取り憑かれるようになった。特に夜にくるそいつを遠ざけるため、ともかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩くようになる。
ある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているところに出くわす。
それをきっかけになぜか増えていく「深夜の散歩」メンバー。
みなそれぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため歩き続ける。
わたしもたまに夜、無性に頭をスッキリさせたくなるときがあります。
もう何も考えたくない。
感じたくない。
すべてに疲れてしまった。
そんなとき、こんな深夜散歩メンバーがいたら救われるだろうなと思いました。
お互いに詮索することもない。
意見を求め合うこともない。
ただただ静かな暗闇を一緒に歩いて、
ぽつり、ぽつりと、他愛もない話をするだけ。
たったそれだけで、自分は自由であって孤独ではないのだと心のどこかでひとり安心する。
眠れない夜に。
不安な夜に。
歩かずにはいられない夜に。
そんな夜にきっとあなたに寄り添ってくれる。
そんな素敵な一冊でした。