「傷つけられた本人は忘れている。でも、傷つけたほうは覚えていて、見るたびにその体に残る傷痕を探してしまう。どんなに薄くなっても、後悔の味はそのたびによみがえるのだろう」
傷にはたくさんの種類がある。刺傷、火傷、誰かにつけられた傷、自分でつけた傷、そして目に見える傷、目には見えない傷。
ある傷は他人からは見えないかもしれない。けれど、確かに傷ついていて本人は耐え難い痛みを伴っているかもしれない。
傷は記憶でもある。無自覚に傷つけられた人はその傷をずっと忘れない。誰かを傷つけて後悔してる人は傷という記憶とともに背負っていく。
この物語はそんな傷に関する様々な人のお話。誰にでも起こりうるような小さな傷から、痕が一生残るような深い傷まで。
あなた自身にももう忘れてしまった傷がたくさんある。
けれど、その傷を今でも覚えている人がいるかもしれない。