「色を取り払ったからこそ、本当の形が見えることもたくさんあると思うんだ」
人が蝶のように見え、美しい状態で永遠に保存しておく標本にしたいと考えた主人公。ひたすらに美を求め、芸術として人を殺めていきます。
後半にかけての展開が衝撃的で、読後の余韻がリアルに1週間ほど続きました。湊先生の得意とする様々な視点から物語が進むことで、犯人に感情移入する場面や、それを批判する世の中の声に倫理観や常識が何度も歪んでしまいそうでした。
物語が展開されていく中で、「視覚」が大きなテーマとなっていました。視覚とは人が目から情報を得て脳で処理しているもの。それは常に一人称であり、鏡などを用いらなければ、自身の姿を見ることはかないません。
また、自分の見ているものが他人と全く同じということは証明することができません。自分の見えているものが必ずしも真実とは限らないし、正解かも分からない。
世の中を見ていると視覚で得られる情報だけでなく、多くのことに言えることだと思いました。
当たり前に使用している視覚という情報を疑ったことが1度でもあったでしょうか。
あなたの目に写る世界はどのように見えていますか?
小説というよりは1つの芸術のようで描写、ストーリーの構成、テーマ、全てが秀逸で美しい作品。是非皆さんもその目で体感して下さい。