昨年の本屋大賞にノミネートしていたのをみて、手に取りました。
18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉。
ネネに見守られながら地域を、生活を経ていく。その40年を描いたライフノベルです。
現代において、優しさの感覚はあまりに相対化されすぎてとても陳腐になってしまったような気がします。
本書が描くのは、それとは別の、人間存在に由来する、ただそこに昔からあったような「優しさ」性でした。
善意という言葉では説明できない「善意」、信頼という言葉では表せない「信頼」、そういうものを示し、残していくために物語はあるのでしょう。
私たちが当たり前なのに忘れてしまっていたこと。
それはたとえば自分の手の届く長さであったり、恵まれているかなんて本当はどうでもいいということであったり。
つまりは、自分の大きさの人生を自分が背負っていくということ。
それを大事にしようと思える、素敵な言葉や生き様に出会える幸せな作品でした。