「死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない」
少し前に朝井さんの「正欲」を読んで、他の作品でどれを読もうかしら…と考えていたら兄が置いていったこの本が家にあったので何気ない気持ちで読み始めました。
生きていると感じる、これっていつまで続くんだろうという漠然とした不安感や不条理。そうした鬱屈とした感情の解像度の高さに息が苦しくなります。
これから歳を重ねて人生で起こりうる感情、仄暗い苦しさを予習できて、突然遭遇するよりも衝撃を和らげられたような気がします。
6篇の短編からなりますが、全て読み終えた後は力が抜けて呆然としてしまうような、力のある一冊だと思います。