舞台は江戸末期新吉原。小見世である山田屋の遊女たちの生き様が綴られます。
少し作品から話は逸れますが吉原が都内で移転したということをご存知ですか?元は現在の日本橋付近にありましたが江戸の発展と大火により台東区に移り、後者を新吉原と呼びます。新吉原は時代の影響を受け形を変えつつ昭和中期まで存続しました。最早フィクションの世界で縁遠いものに感じてた吉原が70年ほど前までその名を保って存在していたことがとても驚きでした。
この作品の中で描かれる遊女たちは宿命を受け入れ、自分の境遇を嘆くわけでも恨むわけでもなく仕事をこなしながら年季が明けるのを待っています。閉ざされた環境の中で時に支え合いながら自らの生き方を見定めて行く姿は美しいですが、常に何かを諦め続けるその生き方は哀しいものでした。
遊女に恋愛はご法度です。でもそうわかっていても彼女たちは恋に落ちます。
今までの自分の生き方を変えてまで誰かを愛すのか。その答えはそれぞれですが、たとえ悲惨な結末になっても、一度この物語を読んでしまえばその決断に疑問符をつけることは出来ないと思います。
コースター本として入口付近に置かれています。ぜひ手に取ってみてください。