「限られた理解力しか持たないわれわれの脳があまりにも複雑な世界に対面した時に壊れてしまわないために脳自身が設定した安全装置−それが因果律なのです。」
第2回ホラー小説大賞の短編賞受賞作「玩具修理者」と小長編「酔歩する男」の二篇を収録。
ホラー小説らしい陰鬱で黒々しい空気を纏いながらも、ユニークな物語と人物たちの繰り広げる高度な議論に惹きつけられ、恐ろしいはずなのにページを捲る手が止まらない。まさか!?な理由で眠ることが怖くなります。
怪奇や幻想の世界観に加え、思弁的論理の凄まじい応酬が魅力。時間や意識とは何なのか、はたまた物理法則や因果律は本当に正しいのか、そういった読者の認識をことごとく崩壊させるような思索が秀逸です。
ホラーというジャンルでは括ることができない、意地悪な遊び心も感じます。
2篇合わせて約200pと手に取りやすいボリュームですので、ホラーを読んだことない方や一味違ったミステリを読みたい方、量子力学やタイムスリップものに惹かれる方にもおすすめです。