先日、こちらの本を読んでいた最中に、丁度お客様も同じものを読んでいました。ブックカバーまで同じだったのでびっくり。続編が発売したということで、今再び注目を浴びている作品です。
とにかく、今年読んだミステリの中で一番を挙げるとすればこれです。それくらい面白い。
『自称・スズキタゴサク。取調室に捕らわれた冴えない男が、突如「十時に爆発があります」と予言した。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。爆破は三度、続くという。ただの霊感だと嘯くタゴサクに、警視庁特殊犯係の類家は情報を引き出すべく知能戦を挑む。炎上する東京。拡散する悪意を前に、正義は守れるか。』
このスズキタゴサク。本当に魅力ある悪役です。
不敵に自意識を語り続けるその姿に、読者である私たちは容易に善悪の逆転を起こします。
取り調べる側のはずが術中に飲み込まれていく刑事の姿は、フリでありながらもミソのような惹きがあり、第一部を読んだだけで面白くてため息をつくほどでした。
そして本書のもう一つの見どころは「正義は守れるか。」という問いです。
人々でもなく、東京でもなく、「正義」です。常に「そちら側」と隣り合わせになる警察の苦しみや葛藤。
本書は、幾人かの主人公を同時に据えることで、その生々しい描写を果たしています。
彼ら一人一人がどのように悪意と相対し、混ざり合い、しかし「守る側」としての信念を見出していくのか。
整理された少ない手数で、ここまで描きうるのかという感動があります。
回収されていない伏線もちらほらと見受けられるので、続編が楽しみです。