2024年の本屋大賞「成瀬は天下を取りに行く」の続編。主人公・成瀬が大学生になるまでの更なる成長を描いた連作短篇です。
前作を読んだ感想としては、良い意味であっさり、だれでも90点くらいの楽しい読み味だな〜という感想でした。
しかし本作、120点です。もし前作で止まっている人がいるなら、すぐにこちらを読んでください。
ああ、これが描きたかったのかと。この作品に満ち溢れたエネルギーに真の意味で触れることができるでしょう。
少し変だけど変じゃない、そんな主人公・成瀬の姿は、自分らしく生きる勇気をくれるものです。しかし、本作の見どころは彼女と関わり、絆を深めていく周囲のな人々です。
地元の小学生、バイト先に訪れる主婦、ビジネスパートナー、そして親友の「ゼゼカラ」片割れ・島崎。
読み終わる頃には成瀬という人物にでなく、彼女たちの生きた関係値の中に、自分を投影していました。
個人という単位は、実は他者と切り分け不可能なのだと思います。
人と人は影響しあい、混ざり合いながら存在している。それは成瀬と島崎のように、誰もがおかしくて、おかしくない人であること。
そして誰もが振り回したり、振り回されたりする人であることを意味します。
平野啓一郎さんが唱えた「分人主義」のような、そんな生きた関係値のあり方を肌身に感じることができる作品です。